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わたしのソファー

セラピスト

本書にも記載があるが、イタリアの精神科病院の廃絶は世界初であり、数年前に映画にもなった。その事実を数年前に知った私はとても驚いた。いったいどういうことだと。しかし本書を読み、統合失調症は改善する、完治する人もいるということを知り、ショックを受けた。統合失調症は2種類ある。私の母は、幻聴や妄想に苦しめられるタイプで、幼いころから近くで母の症状を見てきた私にとって、その病気が治ることは奇跡だと思っていた。外泊の時、症状が悪くなると病院から医師や看護師が自宅に着て母に注射を打ち連れていく。とても長い長い廊下を歩き、その先の棟は、鉄の扉でかんぬきがさしてある・・母が亡くなりもう18年近くなるが、ずっとずっと、不治の病だと思っていた。
本書での圧巻は、医師の中井久夫の件だ。一昔前だったから可能だった時間の取り方、患者との接し方。
読み進めるほど心が震えた。この人のような先生に診てもらっていたら、母さんだって良くなっていたはずだ。母の人生の物語を私とふたりで紡いでいけたはずだ。
そして河合先生の深さ・広さは、いうまでもない。私は先生の著書をこの先も繰り返し読むだろう。
文庫版特別書き下ろしの、鹿児島でラグーナ出版という就労支援事業所を立ち上げた精神保健福祉士や医師やそこで働く精神疾患の人たちの話が興味深かった。統合失調症などの症状や苦しみを綴った文章を募集して掲載する雑誌を出版しているらしい。
中井氏が言っていた言葉は忘れてはならないと思う。
「言語は因果関係からなかなか抜けない。因果関係をつくってしまうのは、フィクションであり、治療を遅らせ停滞させる。河合先生と交わした会話で、いい治療的会話の中に、脱因果的思考という条件をあげたらおおいに賛成していただけた。つまり因果論を表に出すなということです。」
これは、人との関係にもあてはまると思う。言葉を交わしてもそこに寄りかかってはいけない。それは人を想うことに比例すると思う。

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by umih1 | 2017-01-08 22:10 | | Comments(0)
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