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わたしのソファー

雪と珊瑚と


角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2012-04-28

ひとつの出会いが人生の方向を固めていく。

たった一人で赤子を抱えて途方にくれていた女性が、
店を開店し経営することとともに、自身も成長するという物語だ。

トントン拍子に開店にこぎつける印象があったが、
人の時間は一日24時間、短いようで長いものである。
つぎはぎの人生なんてものはないが、他人の物語はどうしても、
一部分一場面しか見られないものである。
そこのところを分かっていないと、
単なるサクセスストーリーとしか読めなくなるのであろう。
しかし、この物語はそういう安価な物語ではない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ネグレストされた子供時代。
恋い焦がれる親への諦め。
誰にも頼れない、というのではなく、頼る人がいないという寂しさ。
憎しみの裏側。
嫌悪されることについての理解。

ふわふわのほっぺを、奇跡と思う気持ち。
赤ん坊を閉じ込め、境界線ぎりぎりの、気持ち。

赤ん坊の細胞一個一個、全部が母親を求めていたあの瞬間の映像が、
この物語と自分の物語と、ぴったり重なって・・・
胸をかきむしってしまうほど狂おしく、
こういう感情を母性というにはあまりにも激しくて、よくわからなくなってしまった。

賢者役の、くららのことを、詳しく書いてくれなくて良かった。
すべてを明らかにする意味はない。

「施された側のプライド」を鍛える、という話には思うところがあり、妙に納得した。
施す側の喜びは、必ずしも施される側の喜びにはならない。
喜ぶだろうと思ってやったことは、時に傷つける場合もある。
傷ついた施される側が、施す側に気を遣う・・・感謝を示して。
ようするにそれは、気を遣うことに対して、疲労しないということなのだ。
優しさは強さ、という意味でもある。

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Commented by sarakosara at 2012-11-04 23:08
子どもとの関わり。
このお話は読んでいないので、物語については何も言えないけれど
私もミコとの子ども時代の色々があって、一言では言えない思いが今もあります。
それは無意識の中で自分にも重なっているのかもしれない。
小さな子どもって無心に、無条件に母を求めるのね。
切ないなあ。


Commented by Gabrielle at 2012-11-05 05:23 x
ハリーポッターの作者の女性もシングルマザーで失業中に電車の中でハリポタを書いたんじゃなかったっけ??
何で人生が変わるかわからないね、関わる勇気を捨てないことが大事なのかも。
施す側の喜びは施せたというところで、自己満足として完結しないといけないと思います。感謝を求めるのはエゴだな。やりたかったから、やりました。シンプルでいいよねぇ~。
Commented by umih1 at 2012-11-05 21:08
sarakosaraさん
子どもと母親。その関係って、ひとことでは言えないなあと私も思う。
特に初めての子供は、その存在によって親に徐々になっていく部分があって、ただただ可愛いというだけではなく・・・
でも、同時に、自分の行動に対する悔いる気持ちや、愛しさと表裏の何か残酷なような気もちと・・・
・・・こどもって、親が思っている以上に、母親を常に求めてますのね。親が思っている以上に、親に自分を愛してほしいものなんですよね・・うん。すごく切ない。

Commented by umih1 at 2012-11-05 21:15
Gabrielleさん
ハリポタの作者は、あれだけの物語を描くっていうのは、すごいなあと思う。人の想像力って、無限なんだなあ。
この物語も、結局は人との関わりの物語だった。
不幸な生い立ちだけど、芯が強くて一人で子供を産んで育てて・・・っていう生き方が、どうも鼻もちならないっていう人もいて凄く嫌う人も出てきたんだけど、人に嫌われるという何とも言えない部分も描かれていて、おもしろかったな。
そうそう、施す側の求めるものは、施せたという自己満足で十分よね。
これ読んで思い出したのがね、私の山形の祖母が、まだ入院する前元気だったころ、ひとり暮らしの寂しい老人を訪問するという、たいそう素晴らしい企画が高校生の間にもちあがり、祖母は訪問を受けたの。手作りのおにぎりをいただいて、男子高校生二人の前で、食べたんだって。ありがとうさまねえと云って。
「まったくバカにしてさ、いい迷惑なのよねこういうの」と、私に云ってたっけ。
そんな祖母が大好きだった^^
by umih1 | 2012-11-03 21:17 | | Comments(4)
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