ブログトップ

わたしのソファー

出汁の哲学


先日図書館で借りたのは、10冊中8冊を料理本が占めていた。
最近嵌っているのは、料理家で随筆家でもある辰巳芳子さん。
コンビニで買った、クロワッサンのムック本で「免疫力をアップする、発酵食のすすめ。」の表紙を飾っておられたので、それをきっかけに辰巳さんの料理本を読書中。

クロワッサン 2011年 4/10号 [雑誌]

マガジンハウス



辰巳芳子「食の位置づけ」

食べ物を頂いた“瞬間”、自分になっていく。
良い物を良く食べる。からだだけではなく、心も食べ物で作られているのだ。
子どもに食べさせる意味は、ここにあるのだ。

“随筆家”という一面を強く感じさせられた引き締まった文章。以下抜粋。
「祝い膳をかみしめながら、屠蘇を祝い、餅の香気を喜び、煮しめをしみじみ味わう。
先人方がもたざるありさまから手繰り出した甲斐性は、二十一世紀の私どもに暗示的であると受け止めております。日本の根菜類は、愛すべき風土のいとし子。その味わいは、懐かしき土目の象徴。調理法は垣間見る民族の資質。」七十五頁より

「“ああ、やっぱりうちの雑煮はうまいなあ” あの母が、父のこの一言を聞くまで、気を許していませんでした。やりこんだ人間の初心は、たとえようのないものです。」七十六頁より

「なぜ、料理をすると自分の存在を掘り下げやすいか。
きちんとつくるべきようにつくるには、まず、ものの本質と向き合わなければならないからです。その次には、ものとものごとの法則を見つけていく。ものとものごとの法則と付き合っていく、従っていくことが必要になる。
こうすることで否応なく自我がおちていくのです。道元が禅寺の作務に調理を、典座の仕事を重大視したのは、この理由によると考えます。」

毎日食卓を整えるのは大変なことで、きちんと作ろうとすると、相克が蓄積されるという。
相克を抱え続けると、人間の尊厳が傷つくという。そこで辰巳さんは、展開料理を提案している。それは、いわゆるまとめて下ごしらえをして、小分けにして保存しておく。そういうことをして、日々の負担を減らしましょうということである。そういったことが日々のゆとりをもたらすのだという。

家事をすることに対して、身体は自然に動いてしまうが、こころは疲労の蓄積が著しい。
それはなぜだろうか。
辰巳さんのおっしゃる、人間の尊厳が傷つく・・・とまでは云わないが、平日時間のないときの家事労働ほど、こころもぐったりしてしまうのである。

辰巳さんも人の子。やはり毎日の料理をするにはしんどい時もある。
そういう時は、まな板の前で手を合わせるそうだ。
それはきっと、いのちのことを考えるのだろう。そうして心を料理に向かわせるのだ。

他に借りた辰巳さんの本は、
「いのちの食卓」
「手しおにかけた私の料理」

いのちの食卓のほうは、講演や調理法をまとめた本で、前著とかぶる部分がある。
手しおにかけた私の料理は、完璧な料理本で、しかし通常の、写真がいっぱい、時短のためのポイントがいっぱい、ああつくりた~い、これかわい~みたいな料理レシピ本ではない。

説教付きの料理本である(笑。

しかし、これこそ食育を謳う、次世代への想いがつまった、素晴らしい料理本なのである。
はじめに、の文章では、
「この本をお使いくださる方に、切にお願い申し上げることがございます。それは、つくりたいとお思いになるところだけ拾い読みせず、一度は初めから終わりまで通読していただきたいのです。
つくりたいところだけ拾うという取り組み方は、自分のしていることが、ほんとうにはわかっておらず行動する方の動きに似ているところがあるように思います。通読してのち、必要に応じた頁を開きますと、料理と仕事の位置づけがおのずから、つかめてまいります。これで、はじめて真の意味で、仕事の段取り、回転ができる方となり、年とともに仕事は掌中に、楽しみと喜びは心中に宿ります。」
というわけで、素直な私はこれを読書中である。素直は美徳だ。

次にお説教に行きます(笑)
私はこの部分が好き。
「“生命々々”と二言めには口にしながら、だしをひくのが億劫とは。何事を為すにも、為し遂げる為には、いくらか自分を励まさなければなりません。仕事は手につけば、面倒であったものが面倒でなくなるときがくるものです。」
料理に対するこういう思想は、すべてに云えること。
でも私、味噌汁には顆粒の即席だし使ってる。煮物にこれ使うと美味しくないから昆布でとるけど。
辰巳さんの出汁のとりかたはえらく時間がかかる。ご本人も、これを毎日するのは無理でしょう、だから1週間分つくっておきましょうと言っている。
出汁のとりかたは、料理人によって違ってくるので、もう少し調べてみようと思う。

「自己実現を志す方々は、男も女もだしぐらいは、ひける人になっていただきたい。段取り良く、計画的にだしを用意し、いつなんどきでも使いこなせるほどの人間でなければ、自己実現など夢の夢。砂上の楼閣に終わるかもしれません。」

えええっとびっくりしてしまった。自己実現と出汁との関係を論じるとは。
この場合、自己実現=仕事や特技などに能力を発揮したりすることを言っています。
「自分のいのちが花開くような歓びがある一方、日常のものがとても次元の低いものに感じられてくる。ところがそれ抜きでは花も咲かなければ実も結ばないのです。」

この部分を読んで思い出したのは、共働き夫婦2組の話だ。

9時ころ帰宅する妻がコンビニで毎晩二人分のお弁当を買ってくるという話。お味噌汁もつくらない。昇進した妻と昇進した夫。週末の掃除も分担(これはいいけどね。)

もう一組は、カレーを大量につくり、毎晩バラバラにカレーを食べる。ご飯も炊かない。
ずっとカレー。二人して、これが合理的だし、おいしいからいいという。二人とも仕事はIT系。

・・・極端な例かもしれないが、こんな食生活、お昼もきっと外食なのに、わたしなら耐えられない。ていうか、そういうことありえないよう。死んじゃうよう。

要するに辰巳さんのおっしゃりたいことは、だしをとるということは、料理の基本中の基本である。家事は生活の基盤であり、命を管理することに匹敵する仕事である。
よって、必須の仕事である。そういうことをないがしろにして、何が自己実現ですか?
命は勝手に命になったわけではないでしょ。自分の命っていうけど、すべてを共有する、循環するものが命よ。命はあんただけのものじゃあないのよ。わかってんの?!
添加物たっぷりの、フードマイレージが高くて、他人が作ってるもんばっかり食って、なにが自己実現じゃ。実現する前に病気になるのが関の山よ!
ということでしょうね。

こんなめんどくさいこと、いちいち出汁をとってだなんて、忙しくてやってられるか、という人が大多数だと思うが、辰巳さんのように、しっかり叱ってくれるお母さんが、日本には必要なのである。
若い人に好かれよう、可愛いおばあちゃんでいようだなんて、これっぽちも思っていないところがいい。
時代錯誤と受け取る人もいるが、そんなこたあない。
あたしはこれでいく、というスタイル、子供にちゃんとメシ食わせろという、こういうキッチリした物言いができるということ、こういう婆さんになりたい。
どうしても料理ができなければ、国産の、良いお醤油を使うとか、なにか食に対する自分なりの思想を持つべきだという、そういう結論に達しました。
[PR]
Commented by Gabrielle at 2011-10-15 23:10 x
私もウチの家族も、既製品ばかりでは、生きていかれないタイプ。
かつて2週間、私が術後絶対安静で、ゴハンが作れなかった時、冷凍食品+既製品で息子がキレて、しかたなくダンナが作ってた(爆)
で、ますます息子はご機嫌ななめ...。まずいっ、パパ!ってね(笑)。
「ウチで、かーちゃんが作ったものを食べるのが当たり前」って代々思ってる人たちの集まりなんだと思う。
もちろん、出来合いサラダとか、ハムとかソーセージとかも買うけど、ウチの場合そっちが「特別」。
今は仕事してないけど、もし仕事して、忙しすぎて、家族のゴハンが作れなくなって、かつ替わりに作ってくれる家政婦さんが雇えるほどの収入にならないなら、きっと仕事をセーブするだろうな、って私は普通に思うよ。
お料理上手って言うんじゃないけど、かーちゃん+台所からのいいにおいって、家族のモチベーション上げるよね。
Commented by sarakosara at 2011-10-16 16:42
さっきね、ほかの方のブログで
台所には音があるって書いてあったの。
でも、気持ちが急いているとき、いらいらしているときって音も角がたってくるって。
ああ、そうだなって思った。
でも、台所の音をきいているときって、いいなぁと思います。
最近はもっぱら音をさせる方専門だけど、
家に帰って台所の音がして、いい匂いがしていたら
ほんとうに幸せだろうなって、そんな家に帰りた~い(笑)
でも子ども達がいまだに帰って7くると、いちばんに、今日は何?って言うのがちょっと嬉しい一言かも。
そっか、だし汁と自己実現の相関関係ね^^;
私が本気でだしをとるのは、お正月のお雑煮くらいだな、この味だけは覚えていてくれたら嬉しいななんて思ったりしながら。
Commented by umih1 at 2011-10-16 20:16
Gabrielleさん
母ちゃんのご飯なしの2週間は、みんなしてしんどかったろうね。
こういうとき、お父ちゃんはつらいよね。子供は正直だから、まずいって、はっきり言うし(笑。
残業続きの時、スーパーでお総菜買って帰っても、なんだか落ち着かなくってね・・
味噌汁はもちろん作るけど、お総菜はお皿に移して、結局もう一品作って、そうしてやっとほっとするという。
やっぱり手作りがおいしくてうれしいなと思うよね。
ハムとかソーセージとか、作ってみたいなと思うけど、難しそう。できるようになったら、そっちが本職になったりしてね~
家族=あったかいごはん。
て、思う。
Commented by umih1 at 2011-10-16 20:29
sarakosaraさん
台所の音は、随筆家の幸田文さんが、そういう本をだされてますよね。
台所の音と匂い・・・毎日の営みの幸せ。
そういう情景が、皆の心の糧になるのでしょうね^^
だしは、水に昆布を入れっぱなしで冷蔵庫に入れておくという、超手抜きな方法なんですよう。
昔、私の祖母が、鰹節を使う分だけ削ってましたっけ。
今、鰹節を削るなんて、若い人は知らないんだろうな~と残念な気がします。
削りたての鰹節は、おいしかったな~
飼っていた猫ちゃんの餌は、ご飯に鰹節をまぶして食べさせたものです・・

Commented by pikeflower at 2011-10-16 22:00
わたしは辰巳芳子さんが好きです。
藤野真紀子さんすてき、的な感じではなくて、尊敬という意味で。
料理をとおしてちゃんと自分の哲学もってらっしゃる人。

彼女の本を読んだ妹が、この人はマスールみたいだといってましたが、
わたしも他の人気料理研究家とは一線を引いた
格のちがいみたいなものがある人だと思ってます。

わたしは色彩心理の勉強をしたのですが、
この方の台所が、鍋、食器他いろいろほとんどが白で統一されているのをみて、
これが、彼女を物語っているなと
即座に感心した記憶があります。

白が意味する心理は、人への原型的な愛情、自分をさしおいても奉仕するという献身的な愛。

彼女の本質はそういうところにあるんだろうな~と。
Commented by umih1 at 2011-10-17 23:14
pikeflowerさん
辰巳さんて、料理研究家というよりも、料理文化継承専門家ですね。
色彩心理って、好きな色でもわかるんですかね。
辰巳さんは、白いブラウスやセーターをよく着てますよね、そういえば。
人への原型的な愛情って、すごいです。
辰巳さんは食にたいしてとても危機感をお持ちですよね。
いのちに対する責任を感じましたよ。
Commented by pikeflower at 2011-10-18 11:27
<色彩心理って、好きな色でもわかるんですかね。

傾向として、
常に一つの色を、生涯通じて選びがちであれば、
その色の表す心理を本質的にその人はもっているかもしれませんね。
でも一日、一週間、とか一年とか数年とか、そういうスパンで人の気持ちもかわっていくので、
どうでしょうかね、
ちゃんとテストでみてみないとなんともいえません^^

辰巳さんは、彼女のプロフィールやおっしゃることをみると、
やっぱり白の人だなぁとわたしは思ってます。

Commented by umih1 at 2011-10-18 22:02
pikeflowerさん

あ、そうか。好きな色ってずっと同じわけではないものな~。
私はいま何色がすきかな。今は何でも好きだな~。
それじゃあわからないね^^
あ、私の母は、紫色が大好きだった。ずっと。
pikeさんは何色が好きなの?

Commented by pikeflower at 2011-10-19 14:47
わたしも
何でも好き~(笑)

でもそういえば、この夏は、お疲れモードだったから、
活発・活動・エネルギーを表す暖色系は全然だめで、
やる気減退の寒色系だったような気がするゎ。
(ざっくり言うとだけどね)

お母さまの紫は、、どうでしょ。
どんぴしゃこれは、心の色です。
体調や気分がウツウツしたときの色でもあるし、
クリエィティブな芸術家系の方や
宗教的だったり、
高貴な色でもあるし。
それにあわせる色によっても意味が違うのよ。

Commented by umih1 at 2011-10-19 22:22
pikeflowerさん

寒色系って、やる気減退なんだ。
そうか~

今日は寒い・・・活動的になるには、暖色系が良いんですね、なるほど。
暑いのも辛いけど、私は非常に冷え症で、冬は嫌いじゃないけれど、すっごく寒がりなんだよね。
冬はだるまみたいに着こんで、動きが鈍くなる。
ある時は、味噌汁の鍋をテーブルに置こうとしたら、派手にこぼしてしまったっけ。
ああ、着ぶくれで危険な冬がくる・・・

そうなのか、合わせる色によってもいろいろ意味があるのだな。
なんでも、奥が深いものだね。

by umih1 | 2011-10-15 13:29 | | Comments(10)
Days of Wine & Dogs
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31